5月15日(土)まわし屋

 河北春秋に英国の解剖学者ウイリアム・ハーべイは1628年、血液が体内を循環していると主張したことが掲載された。当時は血管を往復するというのが通説。ハーベイは「まわし屋」とやゆされた。ラテン語で「いかさま師」の意味。米SF作家アイザック・アシモフの著作にある「いかさま」とまでは言わないけれど、何か釈然としない。新型コロナウイルスワクチンを巡り、自治体の首長らが一般の高齢者に先駆けて接種を受けた事例が発覚した。しっかりと理由と公表していれば問題もなかろう。「リスク管理の一環で問題はない」としながらも「町民に事前に伝えず信頼を裏切った。申し訳ない」と陳謝した。先着順で予約を受け付ける自治体のシステムはトラブルが相次ぎ、有料で予約を代行する業者も現れる始末。高齢者が四苦八苦するさなか、こっそりと接種を済ませた。いい気はしない。すぐ公表しなかったことは、やましさの表れとも受け取れる。問題のハーベイの「血液循環説」は、彼の生存中に認められて悪評は消滅。代わりに「近代生理学の父」と呼ばれている。公平でスピーディーなワクチン接種をと結んでいた。誤解が解けてスッキリした状態としたいものだ。

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