7月4日(木)失当
日本経済新聞春秋に『「失当」を辞書で引くと「的外れ」といった意味だ。日常会話ではあまり聞かないが、裁判の判決でたまに見かける。司法記者をしていたころ、「主張自体失当」という文言を目にした。知人の弁護士いわく。裁判官にこう言われると結構、ヘコむそうだ。なぜだろう。あくまで知人の個人的な感想だが、関西弁では「アホ」、江戸弁なら「すっとこどっこい」みたいな響きがあるという。不法行為から20年が経過すると、損害賠償請求…』と。「失当」を調べると『しっ‐とう〔‐タウ〕【失当】[名・形動]道理に合わないこと。当を得ていないこと。また、そのさま。不当。「郎君問う所の人は少しく―なる無からんや」』と。過日の議会での請願に対して私は賛成討論で加わったが、反対討論した議員の内容が、憲法等の解釈から「到底、無理筋」な理論展開であるという指摘をいただいたと連絡があった。請願権は憲法第16条で認められた国民の権利であることから、平穏に手続きがなされたものであれば、請願は認められなければならない。この場合、請願は何であれ自己の要求の実現を主張するものであることから、請願を受けた議会は、その内容について審議・審査し、採択するか否かを議決することになる。反対討論した議員は、当該請願を「通常と異なり」としているが、請願は内容を問われないものなので、通常と異っていても問題ない。次に、当該請願を議会基本条例第2条第3号の適用を求めるものとしているが、同号は一般論として市民の意見への配慮を求めているものであり、請願の内容が多くの市民の多様な意見を包含したものでなければならないと解釈するのは無理があるし、憲法第16条の趣旨にも反する。また、議会が請願を採択するのは、当該請願に反対意見の者(利益の反する者)がいるとしても、より広範な公益があると判断したことによるものであり、全ての市民が賛成できるようなものを求めているわけではない。なるほど。失当はしたくないものである。